【コロナ禍】新婚医師のアメリカ留学記【ニューヨーク州】

コロナ禍で送る海外留学新婚生活日記 (時々真面目な医療ニュースも)

インターネットの医療情報は嘘だらけ?SNSに載ってる医療情報の正確性を最新論文のデータからみてみる

最近コロナの影響で偽情報がインターネットでたくさん出回ったことで、

医療情報の信憑性というのが話題になりました。

医療者から見ると明らかなデマも、

そうでない知識の無い方からすると真実に見えてしまったりします。

 

自分はたまたま医療者なので、

医療に関しては色んな専門的な情報や知識なども踏まえて判断できますが、

そうでない分野に関してはやはり付け焼き刃の知識では真偽の判断は難しいです。

だからこそ色んな分野の専門家がいるし、

分からないことを利用して色んな詐欺も起こるわけですね。

 

 

 

医療に関しては、医者でも金儲けのために平気で誇大広告などしている人もいますし、

勝手な治療(もちろん保険診療では無く高額なお金を取る)をして、

手がつけられなくなったら一般病院であとは面倒見てもらうという、

患者を食い物にしてきた医療者を、病院に勤めていると何度も見てきました。

なんで詐欺罪で捕まらないんだろうと思いますが(時々捕まってるニュースもあります)。

 

今回は論文で、FacebookなどのSNSに載ってる癌の医療情報を調査し、

その情報の真偽を調べて、

どの程度の偽情報が出回っているかを調べた論文について紹介したいと思います。

 

Journal of the National Cancer InstituteというImpact Factor 13.506という一流誌の記事になります。

Johnson SB, Parsons M, Dorff T, Moran MS, Ward JH, Cohen SA, Akerley W, Bauman J, Hubbard J, Spratt DE, Bylund CL, Swire-Thompson B, Onega T, Scherer LD, Tward J, Fagerlin A. Cancer Misinformation and Harmful Information on Facebook and Other Social Media: A Brief Report. J Natl Cancer Inst. 2021 Jul 22:djab141. doi: 10.1093/jnci/djab141. Epub ahead of print. PMID: 34291289.

 

今回は著作権の関係で詳細なデータや図表は載せられないので、

要旨以外の詳細な内容は省きます。

 

 

 

 

内容としては、

Facebookなどの4つのSNSに掲載されている、4種類の癌(乳癌・前立腺癌・直腸癌・肺癌)に関するアクセスの多い記事を計200個取り上げて、それを専門家に評価してもらっています。

 

その結果、

32.5%(65記事)に誤った情報が、

30.5%(61記事)に患者に有害となる情報が、

含まれていました。

 

誤った情報を載せている記事のうち、76.9%(50/65記事)に有害な情報が含まれていました。

ちなみにこの有害な情報というのは、

具体的な1例としては、

「本来の治療をおこなずにalkaline diet(アルカリ性食品ダイエット)を行うと癌が治癒する」といったような内容でした。

 

 

おそらく通常の精神状態などであれば、こういった類の宣伝文句は信じないでしょうが、

癌などの病気になって精神状態も不安定だと、

ちょっとした胡散臭い情報も頼ってしまいます。

 

また、上手かったりするのは、

本当の情報の中にサラッと自分の信じ込ませたい情報を入れたりする手口もあります。

 

多少の民間療法を行うことは、気も紛れたりしますし少しでも希望を持つという意味で、

全く問題無いと思います。

 

ただ中には通常の治療をやめてまでどっぷり信じ込んでしまい、

(ここでは具体的に書きませんが、実際、中には信じられないような治療を行い、

そしてそれを信じて高い金を払う人も診てきました)

結果癌が重篤に進行した状態になって病院に戻ってくる

(もちろん自由診療を行っていたクリニックはその後の面倒を診ない)、

ということを何度も見ているので、

もし重い病気があって、他の民間治療を受けてみたいということがあれば、

よく主治医と相談することが必要かと思います。

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製薬会社のコマーシャルが本格的!ここまで説明しているとは・・

テレビで製薬会社のコマーシャル(CM)が時々流れているんですが、なんか1分以上流れてる気がしたので、よくよく聞いてみると内容がすごく濃い気がしてよく見てみることに・・・

 

日本の製薬会社の製品紹介のCMは、基本的に市販の薬を15−30秒ぐらいでサラッと紹介して勧めるような感じだと思います

 

ただアメリカの薬の製品紹介は内容がかなり詰まっている、というより、もはや市販の薬の紹介では無くて、医師でないと処方できない新薬や抗癌剤などの紹介をしてます。

効果についても説明していますが、副作用についても説明しています。

 

例えば、このヤーボイ+オプジーボという2剤併用療法の薬のCMが流れていたのですが、

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これはどういう薬かというと、

皮膚癌、肺癌、腎臓癌などで使用される免疫チェックポイント阻害薬という体の免疫に働きかけて癌細胞を攻撃する様な薬を2種類組み合わせたものです。

非常に高価な薬で、合わせて薬価は100万円以上するのですが、癌に対する高い効果が認められることもあり現在日本でも臨床で使われています(時には薬剤投与のみで完全に病変が無くなることも!)。

ただ、体の免疫に対して働きかける薬なので、全身のあらゆるところに副作用が出現する可能性があり、時には重篤な副作用が起こることもあります。

 

 

 

当然、臨床で患者さんに使用する際には効果と副作用と十分に説明した上で使用しますが、難しい内容ではあるので、予備知識が無いまま説明を受けても、なかなか完全に理解して疑問に思ったりしたことを質問したりは難しいかと思います。

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写真では撮りそびれて、筋肉/関節痛の合併症の説明のところしか撮影できてないのですが、

ただ、こうやってCMであらかじめ薬の内容、効果、副作用と症状が出現した時にどうするかなどが説明されていると、それだけで全ては理解できないにしても、そういう薬なんだなという心構えと下調べなどの準備ができた上で主治医の話を聞けるかと思います。

 

今回は1例にがん免疫の薬の話を出しましたが、他にも抗癌剤や糖尿病の薬など色んなCMがありました。

 

これは乳癌の治療に使われる分子標的薬というタイプで、アベマシクリブという薬剤になりますが、

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同じように効果と色々な副作用が説明されたりしていました。

10種類以上の症状が載っていますね

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こちらは2型糖尿病のトルリシティという注射薬の紹介ですね

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実際のところ、こういったCMが流れている意図として考えた個人的な考えとしては、

現在は一つの疾患に対しても色々な治療薬が増えてきていて、薬も高価なものが色々な会社からたくさん出てきていますから、製薬会社としては、CMを見た患者さん自身に数ある選択肢の中からこの薬を希望して選んで欲しいという思惑とかもあるのかもしれないですね。

でもちゃんと副作用は説明しとかないと製薬会社が訴訟されるかもしれないので、そこの説明も行っているというところでしょうか。(完全に主観的な考えです😅)

 

なお、最後に話が逸れますが、新しい治療薬・治療法などは悪徳な診療所だと、個人購入して保険適応外の疾患の患者さんに薬を薄めたりして自由診療で高値で売っていたりするというような話も聞いたことがあるので、そういったところには騙されないように注意してください😓

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